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極私的山崎春美体験⑨ 山崎春美の文章 [80年頃の日本のパンク]

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JAM特別ゲリラ号に掲載された小説"IcesCream PARANOIA"のほんの一部をかいつまんで転載します。

皿という皿は汚れてしまっている。できることなら今日のうちにでも洗っておきたいところが、相憎にもダッシング・キイポイント・ウォッシャーの点検日で配管工である発泡スチロールが来るまでは手もつけられない。
昨晩の人騒がせで救いのない夕食を思い出させる奇妙に青い油は、人口蛍光塗料のひどくケバケバしい煽情色にあおられて、見た目にもまぶしい恥かしい、粘液質の光り方をしていた。

・・・

思わず路上でギョッと立止り、泣き出しそうなヒステリーを土気色の皮膚に秘めたままいくも戻るもままならないぼくの立往生を、すくいあげるためでもあるかの如く発疱が口笛でハミングをかなでながら下手より登場。屈託のない明るい表情であの禁句をぼくに告げた。「やあ、沈んだ顔付きは変わらないね」

・・・

発疱からそう言われた瞬時、ぼくの中で再び電線がショートしたのだ。それは決定的だった。とり返しがつかない混線の仕方で、ぐにゃぐにゃに骨の軟化したヒトデの大群が、暴量の灰皿を踏んずけて、遠まわしにガス中毒の未来を閉ざしていく。扉は次々にしまりかけては反動で放たれ、まるで光線銃の寝台を、切迫した苦しいくすぐりで種分配しているようだ……。

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